グリセリンフリー、グリセリンフリー、グリセリンフリー。
最近、私たちは何かを排除することで大きなものを得ようとしている。
ミニマリストが床で寝て腰を痛めてしまうように、物事の側面には必ずデメリットが存在する。
今回は、基礎化粧品に高確率で配合されているグリセリンについて考える。
グリセリンとはそもそもどういった成分?
グリセリンとは、高等植物や海藻、動物などに広く含まれるアルコールの一種で、グリセロール(glycerol)とも呼ばれています。
グリセリンは、強い吸湿性を持つ性質があります。その性質から、保湿剤として化粧品などに多く配合されています。
https://himitsu.wakasa.jp/contents/glycerine/
一般的に、グリセリンは人体に無害。
高い吸収効果による保湿性。そして無味無臭で水に溶けやすく粘性を持つ成分であり、金額も手頃。
このことから、様々な化粧品や医薬品に使用するのに非常に使い勝手がいい成分である。
プチプラコスメの保湿剤の大部分がグリセリンが入ってる
金額が手頃で、安全性も高く、保湿力が抜群。
だからこそ、プチプラスキンケアの保湿成分の大部分を、グリセリンで賄っていると言っても過言ではない。
化粧水や乳液の多くに含まれているグリセリン。
私たちがコスメを選ぶ基準としている、しっとりタイプ・さっぱりタイプの大きな違いはグリセリンの濃度にあると言える。
しっとりタイプにはグリセリンはたっぷり入っているし、さっぱりタイプなら少な目。
乾燥民は少なからず、過去にグリセリンの恩恵を受けたことがあると言えるだろう。
グリセリンフリーが流行っている理由
グリセリンフリーが流行っている理由は、
- グリセリンフリーのスキンケアに変えたら毛穴が目立たなくなった
- グリセリンフリーを始めたら肌がなめらかになった
というがSNS上で非常に増加しているからである。
それに伴い、コスメ業界も、「グリセリンフリーコスメ」という枠組みを作って、グリセリンフリーというワードに乗っかろうとしている傾向にある。
そして、グリセリンって良くないもの?という認識が徐々に浸透し始め、よってグリセリン辞めてみました。という流れが出来上がる。
結果、グリセリンフリーと言う言葉がスキンケア界隈に馴染み始めて、トレンド入りする、というのが事の発端だ。
グリセリンの何がデメリット?
そんなグリセリンがこのように最近、やけに嫌われている。
その主な理由が下記になる。
- グリセリンはニキビの元となるアクネ菌を増やすかも
- グリセリンは毛穴の黒ずみを悪化させる
人体に無害どころが、お肌にとって最悪じゃないか。
なるほど、これはグリセリンフリーが世に広がり始めるわ、しかし本当なのか。
なんとも信じがたい内容。
これが事実ならばグリセリンは絶対に使いたくない。
一体どういった根拠でこういった情報が流れているのが、実際にそのメカニズムを深堀してみよう。
グリセリンがニキビの元になるという根拠
ニキビが出来る原因の一つに、アクネ菌の存在が挙げられる。
お肌の上の皮脂をエサとするアクネ菌が過剰増殖することによって、お肌が抵抗しようと炎症を起こすことでニキビの原因となる
だからこそ、ニキビが出来やすいお肌はなるべくオイリーにならないように清潔に保とうよ、というのが我々の常識。
しかしグリセリンがどう関係する?それには意外な側面があるのだ。
皮脂の成分であるトリグルセライドは、皮膚の表面に存在するリパーゼという酵素によって脂肪酸と”グリセリン”に分解されます。このことから、皮脂そのものが保湿剤であると同時に高い保湿能力を持った”グリセリン”の供給源でもあることがわかります。
https://www.m-skin.com/archives/2046/
お肌に存在する皮脂は分解するとグリセリン!?
- グリセリンは紐解くと、皮脂の成分に非常に近い成分であるということが分かる
- 安定性も高く低刺激
- だからアクネ菌の餌になる可能性も考えられる!?
確かにこのことから、ニキビの出来やすいお肌にとってグリセリン濃度の高いコスメを使う事は、言ってしまえばアクネ菌の餌をばら撒いていた、というメカニズムになっていた可能性が考えられる。
そして、これは単なる憶測ではないという結果も。
以下に、製薬会社「サティス製薬」が研究・発表した内容を紹介する。
各種保湿剤がアクネ菌の栄養源となりうるのかを検討するために、保湿剤をアクネ菌に与えてその増殖率を測定しました。
上部グラフ左軸の吸光度が高いほど菌が増殖していることを示します。
グリセリン、D(+)-グルコース、D-ソルビトールは高い資化性を示し、特にグリセリンは通常の増加率よりも約4倍の増殖を示しました。
※資化性(しかせい)とは「微生物が、ある物質を栄養源として利用し、増殖できる性質」を示す言葉です
https://www.saticine-md.co.jp/news/1841
このように、グリセリンがアクネ菌を増殖させる要因に成り得る、というのは都市伝説では無かったことが分かる。
グリセリンによって毛穴が黒ずむという根拠
グリセリン配合の化粧水や乳液を使う事で毛穴が目立つ気がする?黒ずみが悪化する?→グリセリンフリーにしたら目立たなくなった!
という情報がスキンケア界隈ではちょくちょく目にする。
しかし、グリセリンが毛穴に影響するのは気のせい、と言ってもいいほどにその根拠は無い。
- グリセリンの成分は水溶性、だからこれが毛穴に詰まって黒ずむというのは考えにくい
- 毛穴の詰まり=角栓は、タンパク質と皮脂の化合物
- 角栓が詰まる事によって、それが酸化し黒ずむ原因に
よって、グリセリンの性質が毛穴に何かしらの影響を与えているとは考えにくい。
さらに深堀すると、グリセリンが毛穴に影響するおもしろいメカニズムが発覚。
グリセリンの光の屈折率が、毛穴の黒ずみに影響する
グリセリンの性質である、「光の屈折率によって毛穴が目立つように感じてしまう問題」がスキンケア界隈で話題になっている。
グリセリンの屈折率が高いことから、お肌にグリセリン入りの化粧水などを使った場合、グリセリンを通して毛穴自体がくっきりはっきりと見えるようになる。
このことから、グリセリン配合のスキンケアを使用すると、いつもより毛穴が黒く目立っているように感じてしまう。
あくまでも、これは見え方による問題。実際に毛穴自体に影響しているわけでなく、目の錯覚であるという説が有力だ。
よって、グリセリンによって毛穴自体が黒ずむという根拠は無い。
アスファルトに水をかけた部分が、他の部分よりも黒く見える、そうゆうこと??
グリセリンフリーが向いているのはどんな肌?
これらのグリセリンの特性を踏まえると、グリセリンフリーをむやみに行っても肌がきれいになるというわけではないようだ。
グリセリンフリーが向いている、試す価値のあるお肌は、
- オイリー寄りのニキビが出来やすいお肌
- 視覚的にも毛穴の黒ずみが気になる肌
結局はこれに尽きる。
ここで勘違いしてほしくないのは、グリセリンを抜く事によって、直接的にニキビが改善する・毛穴が目立たくなる、というわけではない。
あくまでも、ニキビに関しては、
グリセリンフリーにすることで、皮脂によって増殖し、ニキビの元となるアクネ菌の増殖を抑えることが出来るかもしれないから、結果ニキビ改善に繋がるかも
毛穴に関しては、
グリセリン配合のコスメを使用すると、光の屈折度合いで毛穴が目立つように見えるから、グリセリンフリーのスキンケアをすることで、毛穴が目立たないように見えるかも
というように、絶大な効果が期待できるわけではないが試してみる価値はあるよ、という程度である。
グリセリンフリー、絶対、と躍起になる事でもないのかも
グリセリンフリーのおすすめ化粧水&乳液
グリセリンを排除しても肌がきれいになるわけではない
私たちのお肌の悩みであるニキビや毛穴の黒ずみは、様々な要因が関係している。
食事、生活習慣、間違ったスキンケア、ストレス問題。
様々な原因が複雑に絡み合っているからこそ、直接的な原因を探るのは難易度が高い。
だからこそ、グリセリンが絶対ニキビや黒ずみを促進させる、という考えては無く、あくまでも手段の一部としてグリセリンフリーに手を出してみるのも一つの手である。
私たちは結果を得る前に、選択することが迫られる。
自分の肌とグリセリンの相性は良いか否か。まずは見極める事から始めよう。